温かなこだわりや、
優しい想いを詰め込んだパンやお菓子。
手に取って下さったお客様のひと時に
笑顔と彩りを。
お菓子屋さん、パン屋さんの開業に必要なノウハウや情報をまとめました!
修行を積んて開業を決意された方や、学校や独学で学ばれて開業される方など
これからの新しい可能性に、チャレンジに、是非お役立てください!
1.必要な資格や許可書
製菓店、パン屋さん、カフェを開業するために必要な主な資格、許可をまとめました。
食品衛生責任者
パン屋さんや製菓店をはじめとする、飲食店や食品製造などの食品に関わる業務をする際に必要な資格です。
この資格は、各都道府県が特定している食品衛生責任者の講習を受講し、食品衛生に関する法令や衛生面について知識を学び、講習後のテストに合格することで取得することができます。
これから下記に記載する許可を得るためには、必ずこの「食品衛生責任者」が少なくてもお店に一人はいなければなりませんので、まずはここからスタートしましょう。
菓子製造業許可
菓子製造業許可は、厚生労働省の定める営業許可32業種のうちの一つです。
パン類、ケーキ類、あめ、煎餅、チューインガム、餅、といった菓子類の製造と販売が認められます。
この許可を取得するためには、前述の「食品衛生責任者」の設置と、「施設基準を考慮した設備を整える(施設の共通基準、特定基準を満たす)」ことが必要になります。
※各自治体によって基準が異なりますので、最寄りの保健所や自治体に確認をしましょう。
飲食店営業許可
カフェ営業やイートインスペースを使用した営業をお考えであれば、飲食店営業許可も必要です。パン屋さんでサンドイッチを販売する際にも必要ですので、注意が必要です。
2.開業手順(資金計画からオープンまで)
家賃や材料費用はわかるけど、開業するためにどのくらい必要…?
起業して事業を始めたいと思ったとき、多くの方が抱える課題の一つが「資金計画」でしょう。
具体的な数字は店舗の大きさや売上規模に応じて様々ですが、おおよそ1,500万円以上の資金が必要なのではないか、と言われています。
オーブンやミキサー、ホイロなどの製菓·製パン機材は高価な場合が多いため、事前の資金準備が必要ですね。
費用の概要としては、「設備費」「賃貸店舗費用」「内外装工事費用」「スタッフ人件費」「広告宣伝費」「材料費」「自身の生活費」などが挙げられます。
それぞれの必要経費を算出し、予算を立てて、「本当に必要なもの」や「開業後の手配で間に合うもの」といった優先順位も考慮しましょう。
借入金がある場合、返済時期などにも注意が必要ですので、資金には余裕を持ちましょう。
また、資金調達の一案として忘れてはならいないのが、国や地方自治体が提供する「助成金制度」「補助金制度」の利用です。ここではその一部をご紹介いたします。
助成金制度
助成金は特定の条件を満たしていれば、申請することで高い確率で支給されます。
条件や制度によっても異なりますが、あらかじめ支給額が定まっていることが多いのも特徴です。
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1「業務改善助成金」
生産性向上に資する設備投資等(機械設備、コンサルティング導入や人材育成·教育訓練)を行うとともに、事業場内最低賃金を一定額(各コースに定める金額)以上引き上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部を助成するものです。
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2「地域中小企業応援ファンド」
地域産業を盛り上げることを目的とした制度です。
特産の農作物や地域特有の技術を使った商品開発·販路拡大を支援します。
地域によって受給条件や助成金額が異なりますが、業種等の制限がないのが大きな特徴です。
全国様々な地域·自治体で公表されているため、まずはご自身の地域で当ファンドがないか確認してみてください。 -
3「創業助成金」※東京都内企業限定
都内で創業予定、または創業後5年未満の中小企業を対象にした助成金制度。
創業に関わる経費の2/3以内、上限400万円までを助成します。
対象となる経費は賃借料、広告費、備品購入費、人件費、委託費等と多岐にわたるため、何かと費用がかかる創業時をサポートしてくれます。
補助金制度
補助金は新規事業の際にかかった経費の何%分を補助という形で支給されます。
また、補助金は事前に採択数や補助予算が定まっており、申請時には審査があります。
そのため、申請すれば全員もらえるわけではない点にも留意しておきましょう。
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1「小規模事業者持続化補助金」
小規模事業者が自社の経営を見直し、自らが持続的な経営に向けた経営計画を作成した上で大なう販路開拓や生産性向上の取組を支援する制度です。
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2「IT導入補助金」
様々な経営課題を解決するためのITツール導入を支援するための補助金です。
ITツールの導入やインボイス制度対応、セキュリティ対策などが対象です。補助金は「後払い(清算払い)」であり、検査後にはじめて受け取ることができます。
補助金の対象となる領収書や証拠書類は、補助事業の終了後も5年間保管しておく必要があったり、定期的な事業の状況報告や収益納付が必要となる場合もあるようですので、必ず該当の事務局や内容を確認しましょう。ここでご紹介した中小企業·小規模事業者向け助成金·補助金制度以外にも、様々な種類があります。
上手に活用して「売上拡大」「生産性向上」「販路開拓」「人手不足解消」などに活用しましょう。
助成金·補助金は原則として返済不要ですので、事業の安定化に活用したいですね。
参考リンク:ミラサポplus 補助金·助成金 中小企業支援サイト|経済産業省 中小企業庁 (mirasapo-plus.go.jp)
3.事業計画(コンセプト、ブランディング)
どんなお店なんだろう…?
何を売りたいお店なんだろう?
お客様にどんなお店かすぐにイメージしてもらえるよう、わかりやすい言葉があるといいですね。
コンセプトはいわばお店の概念、構想です。お店のコンセプトが明確であれば、自分がどういう思いで作ったものであるのかはっきりと伝えることができます。
ターゲット層を絞る
(これこそは食べて頂きたいと思えるものを作る)
(自分が好きな素材や味、良さを伝えたい)
(ご褒美気分で食べてもらいたい)
(日々の生活の一部に感じてもらいたい)
など、自分の想いや強みを書き出し、そこから購入層をターゲティングする方法がおススメです。自分の手で、自信あるものを安定的に作り、継続することが前提ですので、ただ理想を語るのではなく、現実的な想いを表しましょう。
ストーリーを作り上げる
商品の紹介や、お店を作った背景など、裏側にある想いを伝えることで、お客様にイメージを膨らませてもらいましょう。
魅力や付加価値を感じていただけるストーリーに、人は惹きつけられます。
作る過程のこだわり、素材へのこだわり、自分の経歴など、伝えたいストーリーをひとつの価値として捉え、お客様からの共感を得ることが重要です。
共感や親近感、愛着、安心感、といった人の持つ感情は購買動向に大きく関わってくるものです。
ブランディング
コンセプト、ストーリーが固まったら、ブランディングイメージを作りましょう。
ブランディングとは、お店や商品に対する信用や信頼を築き、イメージを膨らませ、それを「他とは違う」価値として生み出していくことです。
ただし、自己満足になってしまわないよう注意しましょう。
お客様側の視点から考えることを意識し、時間をかけて育てていくものであることを覚悟の上で実施しましょう。
ブランドを通じて想いやこだわりなどのメッセージが伝わり、認知されれば、社会的な信頼性が向上し、集客や利益に大きな効果が得られるようになるでしょう。
4.開業に備えたい機材、器具
厨房機材や調理器具にはたくさんの種類があります。
作る商品によって様々な選択肢がありますが、まず、厨房機材を選ぶポイントをいくつかご紹介します。
作る商品の種類や量に合わせて選ぶ
生産数に応じたミキサーやオーブンの準備、選定を行いましょう。
衛生面に配慮する
食中毒などの事故を未然に防ぐためにも、衛生面に配慮した機材を選びましょう。
また、パン屋さんを開業するためには各都道府県が定める設備基準を満たす必要があります。「共通基準」と「特定基準」です。
共通基準は、「食品を扱うすべての業種で設置しなければならない設備」
特定基準は、「菓子(パン)製造業で設置しなければならない設備」
という基準が設けられています。
必ず、事前に各自治体の基準を確認しましょう。
適切なコストパフォーマンスが得られるか
機材は高価なものが多いため、場合によっては中古の機械や、レンタルできるものを検討してみるのも良いでしょう。
次に、調理器具を選ぶポイントについてご紹介します。
コンセプトやブランディング、将来の方向性によって選ぶアイテムは異なるかと思いますが、まずはカテゴリーに分けて考えてみることをおススメします。
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1作業場で必要な器具
クープナイフやスケール、食パン型などの型、ベーキングシート、霧吹きなどの調理器具が挙げられます。
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2売り場で必要な器具
売り場環境を整えるためにも包装用品やインテリア、ラッピング資材や衛生用品などのアイテムが挙げられます。
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3飲食シーンなどで必要な器具
イートインスペースやセルフサービスなど、シーン別によって必要なアイテムが異なりますが、お客様が使用されるものになるため、安全性と使いやすさ、ブランドイメージを損なわない、といったポイントに絞って選定しましょう。
5.原材料の仕入れ先、仕入方法
材料や食材の仕入って、どうしたらいいの・・・?
仕入計画を立てる
仕入計画は、原材料や販売する仕入品の仕入金額や仕入先が何社あって、どのくらいの数や金額を仕入れるのかといったことを予定するものです。
まずは、お店のストックの広さや販売予測から適正在庫を確認しましょう。
開業時は適正な在庫量が把握しにくいため、随時チェックして過不足が生じないよう管理が必要です。
計画作成時に詳細が決まっていなければ、仕入先の名称や仕入先数を書いておきましょう。また、既に仕入先毎の仕入原価率が決まっているときは、それぞれの仕入金額まで予定しておきましょう。
支払い条件なども決まっていれば記載しておきます。
使用する食材毎に適した発注方法を選び管理することが大切です。
仕入先候補の例
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1専門卸業者
専門卸業者(食品総合卸)は一般的な仕入先のうちの一つです。ネット検索や他店の仕入れ先を参考に業者を見つけて、事前に見積もりを発行、価格交渉を経てお取引となります。卸業者を検討する際には、「相みつ」といって複数の業者から見積もりをもらって検討することが一般的ですが、検討時には価格・品質のほかに、供給量が安定しているか、配送条件・支払方法がマッチしているか等も確認、検討するようにしましょう。
小ロットの購入には不向きだったり、配送曜日や回数が決まっている場合もあるので在庫管理が難しいことも。新規食材は見積を取ってからの配送となることも多いので、事前の交渉時間も念頭に入れておきましょう。 -
2製菓材料店舗
製菓材料店があればそこに足を運んでみるのもおすすめです。強力粉やレーズンなどはスーパーなどでも取り扱いがありますが、製菓材料店舗の方が安くて品質の良いものが売っていることが多く、強力粉だけでも数十種類の取り扱いがあるお店もあります。実際に目で見て確認ができるので、購入後にサイズや色味がイメージと違ったという心配もありません。
また地域の菓子材料店では事業者向けに配送を行っている場合もあります。小規模の店舗であれば都度買いに行くという仕入れ方法もあります。
通常仕入れでは使用しない場合も急な欠品時に備えて近くの製菓材料店舗がどこにあるのか調べておくとよいでしょう。
卸売価格ではないため、価格は割高の場合が多く、業務用サイズの取り扱いが少ない場合があるので注意が必要です。 -
3ネット通販
通販サイトから購入する手もあります。小売で割高になるのではと思いがちですが、現在は卸専用のネット通販サイトが豊富にあります。
見積不要で豊富な品揃えから選んで購入が可能。予想外の商品を見つける楽しみなどネットショッピング同様の強みがありつつ、掛け払いをはじめとした卸特有の便利な仕組みも利用可能。さらに、小ロットに対応しているところも多く、ロスをカットできるのも魅力です。
住んでいる地域によって配送料や日数が異なるので事前に確認しておきましょう。
また、サイトによっては購入金額に応じてお得な割引が適用されたり、定期的にクーポンを配信しているところもあるので、こまめにチェックしながらお得に使うのがおすすめです。
まずはネット通販が便利!
メリット・デメリットを考えると、開業時や個人経営の小規模なお店の場合は「通販サイト」が便利です。
様子を見て材料によって仕入れ先を変えていくというのも良いと思います。
何よりメリットは、注文から商品到着までが迅速な点、掛け払いなどの便利なシステムが使える点、小ロットにも対応してもらえる点です。

6.オープンに備えたスタッフの採用と教育
ひとりでお店をまわせそう…?
お店の規模や対面販売の有無など、多種多様な形態がみられますが、準備、販売、休憩、片付け、翌日の仕込み、帳簿管理など、お店の運営には多くの業務が伴います。
売上が伸びてお店の規模が大きくなればなるほど、オーナーひとりでお店をまわすのは大変です。
いま大変だから、「とりあえず人手を!」と勢いで採用してしまうと、イメージや業務内容が合わないなどの理由で早期離職につながりかねません。
人手が足りなくなる前に、募集や教育期間を見通した準備が大切です。
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1採用基準を明確にする
どんな人に働いてほしいか、ビジネスコンセプトに合ったスタッフの採用を心掛けましょう。接客がメインであれば、明るく笑顔で対応できる人、落ち着いた空間や作業がメインであれば、正確さや落ち着いた対応ができる人など、コンセプトに合わせた採用基準を明確にしましょう。
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2トレーニングと教育計画
お店のルールやメニューの知識などの指導は適切に行うことが大切です。
スキルの習得や知識の浸透は、スタッフの自信やモチベーションアップにつながります。スタッフのポジティブな姿勢は、より良い営業とサービス、生産性に直結するので、丁寧な計画と進捗確認を心掛けましょう。また、忘れてはならない大切なポイントが、「一緒に働きたい」「このお店で働きたい」と思ってもらえるようなオーナーの人柄、お店の雰囲気づくりです。
良い人材が集まってくるようなお店の特徴には、このような要素があるのも事実です。 長期的な採用計画と視点を持って、さらなるお店の成功を実現していきましょう!
